Doraneko&Donuts

「好きなものに」囲まれながら生きていく!そんな「楽しい」を作り出すブログ

半端者にかけられた大家さんの温かい一言

今週のお題特別編「嬉しかった言葉」
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ちわ、みんな元気かい?

今日はまた「はてなのお題」に挑戦してみるよ!ヽ(=´▽`=)ノ

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右も左もわからぬ都会暮らしで…

今年も春が来た。

確かちょうどこの時期だったと思う。

思い出すのは8年前の事だ。

……もう8年も前のことなのかぁ。(;´∀`)

 

わしは当時、

東京の大学に通うため神奈川のある街にひとり暮らしをしていた。

しかし大学の成績は一向に振るわず、いつしか大学をやめることになった。

そもそも無理があった。別にその大学に行きたかったわけではない、ただなんとなく担任の先生の進めるままに、推薦でその大学に進んだだけだったのだ。そんな自分が身の丈に合わない大学を何とか卒業しようとしたのが無理だったのだ。

 

しかし、わしの心の中には、東京への憧れは強くあったのだ。

本心では大学など別にどこでもよく、とにかく都会で一人暮らしをしてみたかったのだ。

 

そうしてわしは不慣れな神奈川の地で一人、ひとり暮らしを始めることになった。

始めは色々楽しかった。

普段はほとんどオカンがやってくれることを、これからは自分でしなくてはならない。料理を作ったり、掃除をしたり、洗濯をしたり、今まであたりまえだと思っていた身の回りの全てのことを自分でやるのだ。

 

でもそんな生活は案外自分の性にはあっているらしく、意外と楽しみながら黙々とこなしてしまっていた。

そんな自分に、「ああ、俺は本当に今ひとり暮らしをしてるんだ。」という実感を抱きがなら感謝をしつつ楽しんでいた。

 

わしが初めて住んだ部屋は、大学の学生課から紹介された、学生専用に部屋を貸してくれる学生アパート

大家さんは真面目な方で、

人柄も優しそうな50代くらいの女の方だった。

親まだ都会に慣れていないわしに色々と親切に身の回りのことを教えてくれた。本当に良い方だった。

いま思い返すと少しおせっかいな気もしたけど、それでも一人暮らしを初めて右も左もわからない自分にとっては本当に頼りになる存在だったのだ。

 

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学生アパートを追い出されて

しかし、そんな日々も2年ほどで幕を閉じようとしていた。

前述したとおり、成績不振を理由にわしは大学を追い出されたのだ。

しかし、本音を言うとまだ実家には帰りたくない。

何をしたいでもないが、このままここにとどまってまだ都会の雰囲気を満喫したかったのだ。

 

しかしあの親切にしてくれた大家さんのことを思うと心が暗くなった。本当だったら卒業して、晴れてアパートを出て行きたかったけど、現実には退学という非常に不名誉な形でここを出て行くことに、親や身の回りの人たちを落胆させてしまだろうと思うと少し後ろめたかった。

 

そんな申し訳ない気持ちを抱えながら、

引っ越しの日、自分の荷物を引越し屋さんとともに片付けた。

どこからか春の温かな空気とともに青々とした緑の匂いが、荷物のなくなったガランとした部屋に吹き込んで、わしは何も失くなった部屋を一人水拭きしながら、自分の情けなさを噛み締めていた。

 

次にわしが移る部屋は家賃30000円ほどの安アパート。

見た目はボロいけど、カネも仕事もない、親からの仕送りでまだ生活をしている者にとってはそこがお似合いだろう。

そんなわしの内面は、惨めで、みすぼらしくて、親や周囲の期待に答えられず、これからあてどない暮らしを送って行かなくてはいけない現実に、不安でいっぱいだった。

 

最後の荷物が詰まったダンボールを見送ると、大家さんの家へ鍵を返しに行った。

 

大家さんはあの明るい笑顔でいつものようにわしを迎えてくれ、わしが出て行ってしまうことを非常に残念がってくれた。

鍵を渡そうとズボンのポケットに手を突っ込むと、刃をむき出しのままに入れていたカッターに指が触れてしまい思わず指を切ってしまった。

 

指から出ている血を見た大家さんは、

「大変!」と言って慌てて家に戻り、わしに絆創膏を持ってきてくれた。

わしの指に絆創膏を巻きながら大家さんは言った。

 

これから色々あるだろうけど、頑張ってね。

 

涙が出た。

今まで2年間、この知り合いも誰もいない東京に来て、

そんな風に人から暖かい言葉をかけられたのは初めてだったのだ。

 

もちろんもう大人になって、自分のことは自分でやるのは当たり前なのだが、この時はナゼかその大家さんの言葉が胸に染みた。

大家さんに気付かれないように目に溜めた涙を気づかれないように、わしは自転車にまたがった。

次のアパートはここからすぐだ。もうまもなく荷解きが始まるだろう。

 

ありがとう。

 

わしは頬を濡らしながら

新しく芽吹きだした緑の風の中を一人、自転車を漕いでいった。

 

 

その後、今に至るまで本当に色々あった。

辛いこと、苦しかったこと、大学を辞めた半端者には大変なことばかりだったけど、それでもわしはなんとか自分がやりたいことがおぼろげに見えてきて、最近ようやく人生を歩み初めているような気がする。

 

あの時の惨めさは、今でもあの時かけられた大家さんの温かい言葉とともに、良い思い出となって今でもわしの胸に生きている。